先日長野ロキシーで観た映画は、「ボーダー 二つの世界」でした。
激しくネタバレしますので、ご注意くだされ(^-^;
人間の“負” の部分を嗅ぎ取ることができる特殊能力を使って、税関で働くティーナ。
ある時出会った不思議な男性ヴォーレによって、どんどん本当の自分が目覚めていく。
と書くと、恋愛ものなのと思うかもしれません。
🎵You Make Me Feel Like A Natural Woman~🎵
あなたは私を素直な自分にしてくれる~
キャロル・キングのナチュラル・ウーマンを彷彿とさせる映画なの?
いやいや、まったーーーく違います。
だって彼女は、素直な自分どころではない、人間ではない違う“種” なんだということに目覚めさせられてしまうのだから(;゚Д゚)
(ヴォーレ言うところのトロル=妖精)
自分を人間だと信じ、何とか人間社会に適応して生きてきた彼女は非常にショックを受ける。
税関では毎日真面目に働き、休日には施設にいる父親(人間の)を見舞い、近所付き合いだってそつなくこなす。
そしてどうしようもないダメ男と同棲までしている。
こんなところまで彼女は果てしなく人間っぽいのだ。
そんな彼女が、いきなり現れたヴォーレによって自分自身の正体を暴かれていく。
確かに自分は他の人とは違っていた。
幼い頃から容姿のせいで虐められてきたし、特殊な能力も持っている。
今まで疑問に思っていたことが、するすると腑に落ちていく。
まるでパズルが合うように。
やはり自分は人間ではない、別の生き物だった。
一旦気が付いてしまったが最後、彼女はどうするのか。
両親を人間に殺され復讐に燃えているヴォーレは、彼女を引き込もうとする。
果たして彼女は自分の中の“人間” を捨て去ることができるのか。
最後の最後でその答えが分かる。
冒頭のシーン。
死にそうになっていた虫を助けるティーナ。
心の優しい女性なんだなぁと思った。
けれど最後のシーンでは、その虫を赤ん坊トロルに食べさせていたのだ。
冒頭では助けた命を、最後では“食べもの” にしていた。
微笑みながら赤ん坊を抱くティーナを見て、彼女はトロルとして生きていくんだなと分かった。
明るい光が射す、とても美しいラストだった。
ティーナは動物とも友だちだった。
同棲相手のダメダメ男に嫌気がさして、独り夜の森へさまよい出たティーナ。
ここは温かい。もう家へは帰りたくない。
突然ぬっと何かの気配。
「ハイ!今晩は!」
ティーナが見上げた先には、立派な角を生やしたトナカイが立っていた。
だまってティーナに寄り添うトナカイ。←ヘラジカかも?
頬を撫でるティーナ。
ふたりの間には、言葉は無くとも心は通じていた。
月明かりがきれいな夜だった。
このシーンだけでも観てよかったと思える映画だった。
長文お読みいただき、ありがとうございました。