『月の番人』

今日ご紹介する本は、コチラ『月の番人』

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トム・ゴールド著 古屋美登里訳 亜紀書房


先日小布施に行った時に、「スワロー亭」という、まるで洋食レストランのような名前の本屋さんで見つけました。
中身は漫画なのですが、言葉が少なく淡々としたコマ割りなので、まるで絵本のような味わいです。


舞台は月。
人類が移り住むようになってしばらく経っています。
「MOON COP」という原題通り、主人公はここのお巡りさんです。

犯罪も何も起こりませんが、
彼は毎朝きちんと起き、ドーナツショップでコーヒーとドーナツを買い、淡々と仕事場に向かいます。
平和な毎日が続きます。


そんな中、ひとりまたひとりと、住人が地球に帰っていきます。
ある人は、一緒にハワイに住もうと息子に呼ばれたから。
またある人は、オランダで新しい店を開くから等々。

地球にいる時と何ら変わらぬ理由で、皆彼にお別れを言って旅立っていきます。


そうやって人々が去っていっても、彼の生活は今まで通り続いていきます。
ただ、見上げた地球がちょっと賑やかそうなだけです。

そんな中、新しくドーナツショップの店員さんが赴任してくるのですが…。



この本を読み終わった後、とても静かな気持ちになりました。
木々の緑も空の青さも無い、ただ荒涼とした景色が広がっているだけなのですが、
なぜか心が落ち着くのです。
この果てしない宇宙が怖いものではなく、まるで自分の内的世界のように感じるのです。

あまりに外界からの刺激がないため、自分と向き合うしかなかった賜物でしょうか。
たんに2色刷りだから、というだけかもしれませんが。


このところ宇宙旅行が話題になっていますね。
でもあまり身近になって欲しくない。
どこかに聖域は残しておいて欲しいと思う、今日この頃です。


 

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