『ねこのふしぎ話』

新刊のところにあった、やまだ紫さんの『ねこのふしぎ話』。
あれ?やまだ紫さんは結構前に亡くなったはず。
なぜ今新刊?と思いつつ買って帰りました。

今では絶版になってる、ねこの短編5作品が収められている中、
何度も見返すほど中毒になったのが、『鈍(どん)たちとやま猫』。
そうこれは宮沢賢治の『どんぐりと山猫』をベースにしているのです(と思われます。)

やまださんの「鈍(どん)たち」って何ぞや?とか色々気になるところはありますが、何といっても、このやまだやま猫の愛らしいこと。
想像をはるかに超えたセンスで、ハチワレのやま猫ちゃんがセーラーカラーのワンピを着ているのです!

でも、似合っているのかいないのか。
「猫=可愛い」だけでないのは、やまだ紫さんをお読みになった方ならご存知のはず(笑)

自分が書いた葉書にイマイチ自信が持てず、
「下手な字であったろう?」「文章がまずいと思ったろう?」と恐る恐る受け取り人に聞くやま猫。
そんなことはありませんよと褒めると、急に態度がデカくなる。
でも…と間違いを指摘すると、途端にしゅんとする。

エラソーで傷付きやすい。
そんなやま猫がとても愛らしく、生き生きと描かれています。

このやま猫、しまいにはタバコは吸うわ鞭は持ち出すわと暴走し出すんですが、さて結末はいかに。
賢治のとは全く違う決着の付け方に、都会っぽいというか、やまだ紫さんなんだなぁと思う作品なのでした。

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『ねこのふしぎ話』やまだ紫 興陽館


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ちなみに『どんぐりと山猫』も春にやったんですよ(^O^)