江戸時代の怪奇談を集めた、杉浦日向子の「百物語」
そのどれもが怖いというより、不思議だったり切なかったり。
あの頃の人たちは、身近に異界を感じていたんだなぁと思わせてくれる本です。
特に好きなのは、ラストに近い96話めの「フキちゃんの話」
吉原の遊郭に住み着いている“フキちゃん”。
一応幽霊のようなのだが、人の形とは程遠い、お玉杓子のような姿をしている。
いつもは大人しく鴨居辺りでクルクル回っているのだが、
時には布団をめくっていたずらするのもご愛敬。
しかし荒れると手がつけられない。
障子を片端から蹴倒して、最後は決まって枯れ井戸に籠って泣く。
おお〜んお〜んといつまでも。
「フキちゃん、どうしたイ?何悲しい?」
そんな時は家中の飯を握り飯にして放ってやると泣き止んだ。
最後は小母さんが亡くなる時、一緒に連れていったらしいが、こんなコ家にいたら絶対かわいい。
ヒトでなくとも絶対かわいい。
何の因果でこの世にやってきたかは知らないけれど、あの世やこの世。色々な“世”があってこその豊かさ。
江戸の人たちの懐の深さが染み渡った一冊でした。
我が家のふきの食い意地は、このフキちゃんにあやかって?
今日もお付き合いいただき、ありがとうございました。