10年前に読んだこちらの本、もう一回読み返してみました。
「エレファントム 象はなぜ遠い記憶を語るのか」
「エレファントム」は2009年に出版された、ワトソン博士の最後から2番目の本です。
少年時代を南アフリカで過ごした著者が、子供の頃に出会った白い象。
それは果たして現実だったのか。それとも幻だったのか。
時を経て生まれ故郷を訪れた著者は、そこで長年持ち続けた問いへのヒントを見つけます。
幻の象を追いながら見えてきたのは、著者やそこに住む人々の、目に見えぬものへの感受性でした。
その土の上に立ち、空気の匂いを嗅ぎ、耳を澄ます。
嗅覚・聴覚はこんなことまでやってのけるのか。
今まで錯覚や超常現象で片付けられていた出来事も、これで説明がつくのかもしれない。
この二感のなせる業に、空恐ろしさを感じる反面、心トキメキました。
最後に、この本の中で一番美しいシーンを。
ケープ海岸でシロナガスクジラとアフリカゾウが会話する場面です。
「大きな脳と長い寿命を持ち、わずかな子孫に大きな資源を注ぎ込む苦労を理解する者たち。ー中略ー
この美しい希少な女性たちは、ケープの海岸の垣根越しに、互いの苦労を分かちあっていた。
女同士で、太母同士で、種の終わりを目前に控えた生き残り同士で。」